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・アミノインデックスリスクスクリーニング(AIRS)
(がんや生活習慣病のリスク(可能性)を評価する検査です。)
前立腺は男性特有の臓器であり、大きさはクルミ大で重さは15〜20グラム程度です。
前立腺は精液の一部である前立腺液を分泌しており、それらは精子を保護したり動きを促したりする働きがあります。前立腺は膀胱の下にあり、その中をトンネルのように尿道が通っています。前立腺が大きくなると尿道を圧迫し尿の勢いが悪くなったり、尿道や膀胱の知覚が過敏になり頻尿や尿もれの原因となります。進行すると尿が膀胱内に残ったり(残尿)、腎臓が腫れて(水腎症)腎臓の働きが悪くなります。
診断
問診、国際前立腺症状スコア(IPSS)、過活動膀胱症状質問票(OABSS)、直腸指診、尿流量測定(尿の勢いを測定)・残尿測定、エコー検査などで行います。また、前立腺がんの合併がないかどうかを血液検査(血清PSA)などで評価します。
※国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアのダウンロード
※過活動膀胱症状質問票(OABSS)のダウンロード
治療
T薬物療法
薬物療法は前立腺肥大症の治療として、まず試みられる治療です。
1.α1遮断薬
前立腺と膀胱頸部にある平滑筋の緊張を緩め、尿の通りを良くする効果があります。その結果尿の勢いが増し、頻尿も改善されます。数種類のお薬がありますので、患者様の病状や体質に合ったものを選ぶことができます。主な副作用は起立性低血圧(立ちくらみ)や射精障害(精液が出にくくなる)などですが、お薬の調整や中止などで改善可能です。
2.ホスホジエステラーゼ5阻害薬
勃起障害に使われている薬ですが、前立腺肥大症に対する効果も認められています。前立腺や膀胱頸部の平滑筋を緩め尿の通りを良くする効果以外に、膀胱へ行く血管平滑筋にも作用し尿意切迫感(尿を急にしたくなる症状)などを和らげる効果も期待されています。なお、狭心症や心筋梗塞治療薬である硝酸剤やNO供与剤との併用は、血圧低下をきたすため禁忌となっています。
3.5α還元酵素阻害薬
前立腺の肥大には男性ホルモンが関わっていますが、この男性ホルモンの前立腺に対する作用を抑えることで前立腺を小さくする薬です。個人差はありますが1年間の内服で前立腺の大きさが治療前より30%ほど縮小します。主な副作用は勃起障害や乳房障害(女性化乳房など)ですが、それぞれ3%、1.5%程度です。
4.その他
植物から抽出したエキスを薬にした生薬や漢方薬などが前立腺肥大症の治療に使われることがありますが、それらの効果については十分な科学的根拠が示されていません。過活動膀胱を合併しているケースでは、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬などを併用することがあります。
U手術療法
薬物療法を行っても症状の十分な改善が得られない場合などに行われる治療です。一般に入院が必要です。
1.TPRP(経尿道的前立腺切除術)
尿道に内視鏡を挿入し、尿道を圧迫している前立腺を内側から削る手術です。内視鏡の先端に切除ループを装着し電流を流すことで肥大した組織を切除します。手術時間は1時間前後です。手術後数日間は尿道カテーテルを留置します。
2.ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)
尿道に内視鏡を挿入し、レーザーを照射しながら、前立腺の外腺と内腺の間を剥がして、肥大した組織を塊としてくり抜きます。その塊は膀胱の中で細かく砕き、内視鏡の中を通して取り出します。大きい前立腺に対しても少ない出血で安全に行えます。
3.レーザー前立腺蒸散術
尿道に内視鏡を挿入し、高出力のレーザーを照射して肥大した内腺を蒸散(蒸発)させます。非常に出血量が少なく、大きな前立腺に対しても行うことができます。また手術後の尿道カテーテル留置期間が短い利点があります。
※手術を行う場合は連携医療機関へご紹介いたします。
膀胱が勝手に縮んだり、過敏な動きをするために、尿が十分に溜まっていないうちに突然尿をしたくなり、我慢ができなくなる病気です。過活動膀胱には尿意切迫感(突然尿をしたくなり我慢することが難しい症状)が必ずあります。普通は昼間頻尿(起きている間に8回以上)や夜間頻尿(就寝中に1回以上)を伴いますが、切迫性尿失禁は無いこともあります。40歳以上の12.4%、特に70歳台では5人に1人、80歳以上では3人に1人が過活動膀胱を有していると言われています。
原因としては前立腺肥大症、子宮・膀胱・尿道などを支えている骨盤底筋群が弱くなることや神経の異常(脳卒中や背中の神経の病気)などが考えられています。しかし過活動膀胱の多くは原因が特定できません。
診断
質問表(過活動膀胱症状スコア:OABSS)を中心に行います。しかし過活動膀胱と同じような症状を来す重要な病気(膀胱がん、前立腺がん、膀胱結石、膀胱炎など)を見逃してはいけません。重大な病気がないことを、尿検査、エコー検査、血液検査などで確認します。
※過活動膀胱症状質問票(OABSS)のダウンロード
治療
T行動療法
1.生活指導
減量により切迫性尿失禁が改善することが示されています。その他便秘の改善や、過度のコーヒー、アルコール、炭酸飲料、水分摂取を控えること等への有効性が示唆されています。
2.膀胱訓練
排尿を我慢することにより排尿間隔を延長させ、膀胱に溜まる尿量を少しずつ増やす訓練方法です。初めは5分ほどの我慢から開始して徐々にその時間を延長し、最終的には2〜3時間我慢できるように訓練していきます。
3.骨盤底筋訓練
腹圧性尿失禁に対して行われる訓練ですが過活動膀胱に対しても効果が見られます。膣や肛門を締めるようにしますが、その時に腹筋に力が入らないようにします。
U薬物療法
1.抗コリン薬
膀胱平滑筋のムスカリン受容体に作用することにより、膀胱の異常な収縮を抑えて突然の尿意や頻尿を改善します。副作用に喉の渇きや便秘などがありますが最近では副作用の少ない薬や貼付剤もあり、それぞれの患者様の病状や合併症を考慮して薬剤を選択します。
2.β3アドレナリン受容体作動薬
膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体に作用することにより、膀胱の弛緩作用を増強させます。抗コリン薬に見られる喉の渇きや便秘の頻度が低いと言われています。
3.その他
過活動膀胱への適応はありませんが、頻尿症状などに対しフラボキサートや漢方薬などが使われることがあります。
Vその他の治療法
1.電気刺激治療・磁気刺激治療
電気刺激治療(干渉低周波治療)や磁気刺激治療は、電気や磁気により骨盤底筋群や神経を刺激するものです。尿意切迫感や切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁に対する有効性が示されています。保険適応がありますので、その範囲内での治療が可能です。
2.ボツリヌス毒素の膀胱壁内注入療法
薬物療法で改善が見られない切迫性尿失禁に対し海外で行われ、日本では現在治験中の治療法です。内視鏡を尿道から挿入して膀胱壁にボツリヌス毒素を注入します。ボツリヌス毒素が膀胱壁に注入されると膀胱の異常な収縮を抑え、突然の尿意や頻尿を改善します。
3.仙骨刺激治療
日本では2017年9月に保険適応となった治療法です。海外では以前から行われおり、薬物療法で改善が見られない過活動膀胱による切迫性尿失禁が適応です。臀部の仙骨孔から膀胱を収縮させる神経の傍に電極を挿入して臀部の皮下に電気刺激装置を埋め込み、電気刺激によって尿失禁が改善します。
一般に膀胱炎といえば急性細菌性膀胱炎を指します。ほとんどは尿道から入った細菌(多くは大腸菌)の感染により起こります。ウイルス感染、放射線治療、薬剤なども原因となりますが多くはありません。
尿道が短いこと、肛門や膣が尿道から近いために不潔になり易いことなどが、女性に起こりやすい理由です。トイレを我慢する、性交渉、疲れによる抵抗力の低下などが誘因となります。
頻尿、排尿時痛、尿混濁が三大症状です。このほか血尿、残尿感、下腹部の不快感や痛み、尿失禁を伴うことがあります。
診断
尿検査で白血球(炎症細胞)や細菌が認められます。膀胱炎の原因として基礎疾患(排尿障害、結石、腫瘍、尿路奇形など)が潜んでいる事もありますので、それらの異常を発見するためにエコー検査や尿流量測定・残尿測定などを行う場合もあります。
治療
抗菌薬を3〜5日ほど内服します。これでほとんどの場合は治りますが、最近ではキノロン耐性大腸菌やESBL産生菌などの出現により治療に難渋するケースもあり、治癒確認のための尿検査が必要です。
生活面でのアドバイス
・治療中は水分を多めに摂りましょう(尿量を増やして細菌を体外へ出します)。
・日頃から尿は我慢しないで、こまめに出しましょう。
・無理をせず、休息と栄養補給を心がけましょう。
・排尿後は前(尿道側)から後ろ(膣・肛門の方向)へ向かって拭くように習慣づけましょう。
・生理用品はこまめに交換して陰部を清潔に保ちましょう。
・症状が強い時はアルコールや刺激物(唐辛子やコショウなどのスパイス系)を控えるようにしましょう。
会陰部(陰のうと肛門の間)、下腹部、股間、精巣(睾丸)、尿道やペニスなどにさまざまな鈍い痛み、あるいは不快感が現れる病気です。30〜50歳台によくみられ、日本でも年間60万〜100万人の患者がいると推定されます。
原因としては細菌(大腸菌など)、通常の検査では見つかりにくい菌(クラミジアやマイコプラズマなど)による感染や、前立腺肥大、骨盤内のうっ血、アレルギー、自己免疫、ストレスなどが考えられています。
(NIH Prostatitis Classification System)
CategoryT:急性細菌性前立腺炎
CategoryU:慢性細菌性前立腺炎
CategoryV:慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群
VA:炎症性
VB:非炎症性
CategoryW:無症候性炎症性前立腺炎
上記は米国国立衛生研究所(National Institute of Health;HIH)による前立腺炎の分類で、カテゴリーT〜Wに分けられ、CategoryUとVが慢性前立腺炎と呼ばれる病態です。そして前立腺炎の90%以上はCategoryVが占め、一般に治療に難渋することが多いタイプです。またCategoryVは間質性膀胱炎の症状や所見との関連・重複が想定されています。
診断
問診、質問表(NIH慢性前立腺炎症状スコア:NIH-CPSI)、直腸指診、前立腺マッサージ後の尿検査(炎症や細菌の確認)などで慢性前立腺炎のどのタイプかを決定します。
※NIH慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)とQOLスコアダウンロード
治療
慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の多くは原因が分かっていませんので、治療も難しいのが現状です。薬物療法は重要ですが1つの薬だけでは効果が見られないことも多いため、病状などを考慮して数種類の薬を併用することで治療効果を高めます。
最近ではUPOINT(U:排尿機能、P:心理社会学的要素、O:膀胱・前立腺の異常、I:感染の有無、N:神経症的要素、T:骨盤底筋群の緊張性)を考慮して、それぞれの患者様の病態に応じたきめ細かい治療が行われてきています。
生活面でのアドバイス
・ストレスを溜め込まないで自分なりの気分転換法を見つけてください
・仕事上の問題を家庭に持ち帰らず、オン、オフの切り替えが大切です。
・自転車やバイクなど股間を刺激する乗り物は、症状が強い時はお控えください。
・長時間のデスクワークやドライブをする場合には適度な休憩が必要です。
・香辛料の効いた食べ物(唐辛子やコショウなどのスパイス系)、アルコールの摂り過ぎに注意してください。
・飲水量を増やすことで症状が和らぐケースがありますが、摂り過ぎには注意しましょう。
約7千年前のミイラに膀胱結石が発見されており、古代ギリシア時代にすでに膀胱結石の切開手術が行われた形跡が見つかっています。
尿路結石全体の80%はカルシウム含有結石(シュウ酸カルシウム結石・リン酸カルシウム結石)で、その他にはリン酸マグネシウムアンモニウム結石、尿酸結石、シスチン結石などがあります。しかし尿路結石の8割は原因不明と言われており、未だに十分には解明されていません。それ故に再発しやすいことが特徴で、わかっている原因としては、@尿中物質の過剰(カルシウム、シュウ酸、尿酸)、A結晶化の問題(マグネシウムやクエン酸など結晶化阻止物質の減少、アンモニアなど結晶化促進物質の増加など)、B腎・尿路の病気(尿路感染、尿流の滞りなど)、Cライフスタイル(偏食、水分不足、遅い時間の夕食)、Dその他(年齢、性別、遺伝(シスチン結石など)、気候(夏に多い)、ストレスなど)、などが上げられます。
尿路結石は近年増加傾向にあります。男性の7人に1人、女性の15人に1人は、一生に一度は尿路結石を患うと言われており、重要な病気の一つであると考えられます。
診断
病歴、尿検査、超音波検査、CT検査、静脈性尿路造影検査などが必要により選択され、これらにより診断を進めていきます。その中でも病歴は重要で、痛みの起こり方とその部位、尿路結石を患ったことがあるかなどを確認します。
治療
T.痛みに対する治療
1.非ステロイド性消炎鎮痛薬
腎機能障害がある方はその使用に注意が必要です。アスピリン喘息の方には使うことができません。
2.ペンタゾシン
副作用として嘔吐に注意が必要です。
3.漢方薬
芍薬甘草湯は早めの鎮痛効果が期待されます。
4.その他
薬で痛みがひかない時は、尿管に尿を流すチューブを入れるなどの外科的治療も考慮されます。
U.結石に対する治療
1.ウラジロガシエキス、漢方薬(猪苓湯)などの内服薬
2.体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
3.経尿道的結石破砕術(TUL)
4.経皮的結石破砕術(PNL)
5.開腹手術
6.腹腔鏡下切石術
予防
尿路結石の再発率は5年間で約40%で、そのほとんどが2年以内に再発したという調査結果があります。そのために再発予防は大変重要です。
T.水分を摂る習慣をつけましょう。
水分をあまり摂らない場合や多量の汗をかいた後などは、尿が非常に濃くなり、結石ができやすい状態になります。汗をかく量にもよりますが、食事に含まれる水分以外に1日1,500mL程度の水分摂取が望ましいとされています(頻尿がある方は摂りすぎに注意が必要です)。なお水分は水やお茶(後にも触れますが番茶やほうじ茶が勧められます)などが適しています。「結石は夜につくられる」と言われるように、睡眠中の尿の濃縮と停滞が結石のできやすい状態となっているのです。水分は1日を通して平均して摂るようにしますが、特に夕食後は多めに飲むようにしましょう(夜間頻尿や夜尿症がある方は摂りすぎに注意が必要です)。
「結石はビールを飲んで出せば良い」という噂は正しいとは言えません。確かに尿量は増えますが、尿酸結石ができやすい状態となり、また痛みが増強する危険性もあるために注意が必要です。
U.規則正しい食生活の習慣を身につけましょう
1.夕食はできるだけ早めに摂りましょう。
食物の中に含まれるいろいろな成分は腸から吸収され、栄養分として様々な働きをしますが、体にとって余分なものは腎臓から尿中へ捨てられます。概ね食後4時間ほどで尿中へ多量に排出されます。したがって夕食後すぐに床につくと、結石ができやすい状態となるのです。
2.食事は1日3回バランス良く摂りましょう
ほとんどの方が、夕食にボリュームのあるものを摂っているのではないでしょうか?1週間の献立を予め作っておくなどして、バランスのとれた食事ができるように心がけましょう。
V.摂りすぎに注意が必要な食品
1.動物性たんぱく質
摂りすぎは結石を作る成分(尿中カルシウム、尿酸)を増やし、結石を作らせない成分(クエン酸)を減らします。また、尿酸が血液中に増えると痛風(足の関節が腫れて大変痛い病気)や、動脈硬化の原因にもなります。牛肉、豚肉、鶏肉は摂りすぎに注意しましょう。そして必ずサラダなどで野菜を摂るようにしましょう。
2.シュウ酸
結石の原因となるシュウ酸を多く含む食品としては、ほうれん草などの葉菜類、タケノコ、アスパラガス、豆腐、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶、お茶、バナナ、イチゴ、グレープフルーツ、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツなどが上げられます。また、お茶の中でも玉露や煎茶、抹茶にはシュウ酸が多く含まれていますので、番茶やほうじ茶が勧められます。
3.塩分、脂肪、糖分の摂りすぎも、結石を作りやすくするので注意してください。これらは生活習慣病の予防にもなります。
4.塩分に含まれるナトリウムは、尿に排泄される時にカルシウムを一緒に引きずり出す働きがあります。したがって塩分を多く摂ると尿中のナトリウムが増えるのと同時にカルシウムも増え、結石ができやすい状態になります。薄い味付けで結石を予防しましょう。
W.毎日摂りたい食品
マグネシウム、クエン酸、リン酸は、結石ができるのを防ぐ働きがあり、主に野菜や穀物に多く含まれています。しかし不足しがちな食物ですので、1回の食事に1皿以上は野菜料理を食べるようにしましょう。また、結石の成分となるカルシウムやシュウ酸は腸からも吸収されます。便秘気味の方は、繊維性野菜を多く摂り、便通を整えるようにしましょう。繊維性野菜は芋類(ジャガイモ、サツマイモ)、野菜類(ゴボウ、ニンジン、キャベツ、ピーマンなど)、果物類(ミカン、リンゴなど)、キノコ類(干しシイタケ、キクラゲなど)、穀物類(玄米など)に多く含まれます。
X.カルシウムについて
結石の大部分はカルシウムを含む結石ですが、カルシウムは骨や歯をつくる働きのほかに、筋肉の収縮を強める働きや、出血を止める働きなど、体内で数多くの大切な役割を担っています。以前は結石の患者様にカルシウムを摂りすぎないようにお話ししていましたが、日本人には不足気味な栄養分なので、摂りすぎている方以外は特に制限の必要はないと考えられます。ちなみに1日の必要量は600mg以上、1,000mg以下です。代表的な食品に含まれるカルシウム量は牛乳200mLで200mg、豆腐半丁で180mg、めざし5尾で375mgです。
Y.日常生活について
1.健康維持のためにも、適度な運動をするように心がけましょう。
2.ストレスと不眠に注意しましょう。
3.約1年に1回の定期的な検診を忘れずに受けることが大切です。まだ結石が残っている方はもちろんですが、完全に結石が出てしまった方も再発する可能性がありますので、結石が小さいうちに対処できるようにしましょう。
性感染症はSTI(Sexually Transmitted Infections)と表現します。セックスやキスなどの性的な行為によって感染する全ての病気のことをいい、それらは20種類以上にもおよびます。
淋菌感染症
はじめに
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による感染症です。主に男性の尿道炎、女性の子宮頸管炎を起こします。淋菌は高温にも低温にも弱く、通常の環境では生存することができません。したがって、性感染症として人から人へ感染するのが主な経路です。一回の性行為による感染率は30%と高く、性器クラミジア感染症と並んで頻度が高い性感染症です。さらに淋菌性尿道炎におけるクラミジアの合併頻度は20〜30%といわれています。
男性淋菌感染症には男性淋菌性尿道炎、淋菌性精巣上体炎があり、女性性器淋菌感染症には子宮頸管炎、子宮付属器炎(卵管炎、卵巣炎)や骨盤腹膜炎などの骨盤内炎症性疾患(PID:pelvic
inflammatory disease)、肝周囲炎、尿道炎およびバルトリン腺炎があります。
また、近年では性行為の多様化により淋菌性咽頭感染や淋菌直腸感染など、性器以外の感染例が増加しています。
症状と診断
男性淋菌性尿道炎は、感染後2〜7日の潜伏期の後に排尿時痛や尿道分泌物が出現します。分泌物は黄白色、膿性で、量も多く、痛みなどの症状が強いのが特徴です。診断は排尿開始時の尿あるいは尿道分泌物を用い、検鏡法、培養法、核酸増幅法のいずれでも可能です。これらの検査はいずれも痛みを伴うものではなく、普通に尿を出していただくだけで結構です。淋菌性尿道炎が治療されないと精巣上体(副睾丸)炎を起こすことがあり、その場合陰のう内容の強い腫れと、多くは発熱を伴います。また場合によっては男性不妊症の原因となります。
子宮頸管炎の局所症状は帯下の増量や不正出血が一般的ですが症状が無いケースが多いため、無治療のまま男性の淋菌感染症の主な感染源となります。診断は子宮頸管擦過検体を綿棒でとり、培養法または核酸増幅法により行います。グラム染色標本の検鏡による淋菌の確認は男性淋菌性尿道炎に比して困難で正診率は低いのが現状です。
治療
近年、淋菌は抗菌薬に対する抵抗力が増しており(耐性化)、かつて使用されていた薬剤では効果不十分な事が多くなりました。現在、淋菌感染症を内服抗菌薬のみで治療することは奨められていません。保険適応がある確実に有効な抗菌薬は注射薬であるセフトリアキソンとスペクチノマイシンの2剤です。しかしついにセフトリアキソンが効かない淋菌が2009年に世界で初めて報告され、その動向が気になるところです。他の薬としては内服薬のシロップ用アジスロマイシン水和物2gがあります。
性器クラミジア感染症
はじめに
クラミジア(Chlamydia trachomatis)が性行為により感染し、男性では尿道炎と精巣上体(副睾丸)炎を、女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を発症します。その患者数は世界的にも全ての性感染症の中で最多です。また、疫学的には無症状または無症候の保菌者が多数存在するため、感染が広がりやすいことが問題です。たとえば20歳代の無症状の男性におけるクラミジアの陽性率は4〜5%とする報告もあります。さらに女性においてはクラミジア感染症の半数以上が無症状とも言われています。
症状と診断
男性クラミジア性尿道炎は感染後1〜3週間で発症するとされますが、症状が自覚されない場合も多く、感染時期が不明確なケースがあります。淋菌性尿道炎と比べ潜伏期間が長く、症状も軽度な例が多いようです。診断は排尿開始時の尿を用い、主に核酸増幅法によりなされます。また中年以下の精巣上体炎の多くはクラミジアが原因とされ、他の菌による精巣上体炎に比べて腫れや発熱は軽度であることが多いようです。
クラミジア性子宮頸管炎は感染後1〜3週間で発症します。この経過中にクラミジアは子宮・卵管を経て子宮付属器炎や骨盤腹膜炎をおこし、卵管妊娠や不妊症の原因ともなります。また上腹部にも感染が拡がると肝周囲炎を発症します。また妊婦では出産時の産道感染により、新生児に結膜炎や肺炎が起こることがあります。子宮頸管炎の症状としては帯下が増えたり不正出血、下腹部の痛み、性交時の痛みなどが見られることがあります。診断は子宮頸管を綿棒で擦った検体を用い、主に核酸増幅法によりなされます。
咽頭感染はオーラルセックスなどにより、クラミジアが咽頭に感染することによって起こります。診断はうがい液を用いて核酸増幅法により可能です。性器に感染したものと比べ治療に時間がかかると言われています。
治療
マクロライド系薬またはキノロン系薬のうち抗菌力のあるもの、あるいはテトラサイクリン系薬の、主に内服薬で治療します。具体的にはアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ミノサイクリン、キノロン系薬としてはレボフロキサシンやシタフロキサシンなどです。
性器ヘルペス
はじめに
単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)1型または2型の感染により、性器に浅い潰瘍(ただれ)または水疱(水ぶくれ)を来たす病気です。初感染後は腰仙髄神経節(腰の付近の神経)などにウイルスが潜み(潜伏感染)、体の抵抗力が落ちることなど、何らかの刺激によって再び活性化され性器に症状を引き起こします。性器ヘルペス患者の60〜70%は再発性ですから再発への対策も重要です。
初感染初発では、外陰部や口から単純ヘルペスウイルスが放出されているセックスパートナーとの性的接触の後、2〜10日間の潜伏期間を経て男性ではペニスを中心に、女性では大陰唇や小陰唇を中心に病変が出ます。痛みが強く、治るまで数週間を要します。一方、再発は症状が軽く、1週間以内に治るのが一般的です。
症状と診断
外陰部に浅い潰瘍や水疱を認めた場合は性器ヘルペスを疑います。病変の数は、初発では数個から多数で広範囲のこともありますが、再発では一般に少なく範囲も狭いようです。
正確な診断は病原診断によりなされ、分離培養法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法、核酸検出法などがありますが、それぞれ一長一短があります。また血清抗体による診断も検査のタイミングによって正確な判断が難しいのが現状で、実際の臨床の場では丁寧な病歴聴取と前述した特徴的な皮膚所見によってなされることが多いと思われます。
治療
抗ウイルス薬を使います。初発では抗ウイルス薬を5〜10日間内服、再発では5日間内服します。重症例、脳炎や髄膜炎を合併したものでは抗ウイルス薬を注射することがあります。また軽症例に対しては抗ウイルス薬の塗り薬を使うこともあります。
病変が出たときにはすでに単純ヘルペスウイルスは神経節に潜んでいるため、現在の抗ヘルペスウイルス薬で再発を免れることはできません。
再発抑制療法は再発回数が概ね1年に6回以上の症例に対し検討されます。再発による精神的苦痛を取り除き生活の質を上げることや、他人への感染を予防する目的があります。1年間の内服の後に中断して経過観察し、再び内服するかどうかを検討します。
尖圭コンジローマ
はじめに
尖圭コンジローマは、性器へのヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)感染が原因です。HPVは多数の遺伝子型に分類されますが、その中で粘膜型低リスク型であるHPV6または11型が約90%を占め、発がん性と関係する高リスク型のHPV16,18型などが混合感染していることもあります。
これらは性的接触によって皮膚や粘膜の小さな傷から入り、3週〜8か月(平均2.8か月)の潜伏期間を経て、ウイルス侵入部位に乳頭状のイボをつくります。また出産時に赤ちゃんの呼吸器に感染し、呼吸状態が悪くなることが問題となっています。
高リスク型としてHPV16,18型は子宮頸がんや外陰がんの一因と考えられていますが、膀胱がんや咽頭がんとの関連性が指摘されているその他の高リスク型もあります。なお、手足に発症する尋常性疣贅というイボは低リスク型のHPV2,27,57型などの感染によります。
男性では、包茎状態による持続的なHPV感染、女性では膣内の持続的なHPV感染、パートナーとのピンポン感染(うつし、うつされによる感染)、免疫抑制状態(HIV感染者、免疫を下げる薬、糖尿病、妊婦など)などが、難治や再発の要因となります。したがって包茎手術、膣内の観察・治療、パートナーの同時治療などを考慮します。
症状と診断
男性では亀頭(頭の部分)、冠状溝(溝の部分)、包皮(皮の部分)、陰のう(袋の部分)などに、女性では大小陰唇(ひだひだの部分)、会陰(肛門と膣の間)、膣、子宮頸部(子宮の入口)などに、また肛門周囲や肛門内 、尿道にも、 鶏冠(とさか)状またはカリフラワー状のイボが1個〜複数できます。色は淡紅ないし褐色で、時に巨大となります。一般に痛みやかゆみなどの症状はありません。
診断は、感染機会があるかどうかと特徴的なイボの形から可能です。また通常の治療をしても悪化したり、免疫不全の可能性がある時、硬結(しこり)や潰瘍(えぐれ)が見られる場合などは精密検査が必要です。具体的にはイボを切り取って組織検査をしたり、エイズ検査や遺伝子診断などがあげられます。
鑑別診断としては、陰茎真珠腫様丘疹(冠状溝に沿って配列した1mmほどの小結節(ブツブツ))、膣前庭乳頭腫症(膣前庭や小陰唇の縁に沿って配列した3〜5mmほどの小結節)、脂漏性角化症、伝染性軟属種、ボーエン様丘疹症(主にHPV16型感染による)、性器ボーエン病(HPV16型などの高リスク型感染による)などがあります。イボの形や数、組織検査などで診断します。
治療
塗り薬(イミキモド5%クリーム)による薬物療法、電気凝固、凍結療法、レーザー蒸散などによる外科的療法などの治療法があります。それぞれ単独での治療では治る確率が60〜90%、再発率が20〜30%なので、複数の治療法を繰り返す必要のあるケースが存在します。
T.薬物療法:イミキモド5%クリームの外用は2日に1回イボの部分に塗り、6〜10時間後に石鹸で洗い流します。個人差はありますがイボが消えるまでに比較的時間を要します。4ヶ月ほど継続しますが、効果が低い場合は経過中にほかの治療法を考慮します。副作用としては紅斑(赤み)や糜爛(ただれ)があります。副作用が強い場合は一時的に中止したり、3日に1回や4日に1回など塗る間隔を延ばすことで対応します。長所は塗り薬という簡便さ、傷跡が残らないことなどです。短所は外性器または肛門周囲への使用に限られ、尿道、膣内、子宮頸部、直腸および肛門内に使用できないことなどです。なお小児と妊婦への使用は安全性が確認されていない事から制限されます。
U.外科的療法:電気メスによる電気焼灼、炭酸ガスやホルミウムレーザーによる蒸散、メスやハサミによる切除、液体窒素による治療などがあります。当院では電気メスによる電気焼灼術を採用しています。
治っているかどうかについては目で見て判断します。しかし尖圭コンジローマの周囲にもHPVが感染している可能性と、3か月以内に25%ほどが再発することから、治療後も注意深い経過観察が必要です。
梅毒
はじめに
梅毒はTreponema pallidum subspecies pallidum(T.p.)感染症です。一般に、皮膚や粘膜の小さな傷からT.p.が入る事により感染し、数時間後に血流によって全身にばらまかれて様々な症状を引き起こします。胎児が胎盤を通して感染したものを先天梅毒、それ以外を後天梅毒と呼びます。また症状がある顕症梅毒と、症状がなく検査(梅毒血清反応)で判明する無症候梅毒があります。
感染症法では診断後7日以内に届け出ることになっている、重要な性感染症の一つです。
症状と診断
T.顕症梅毒
1.第1期梅毒:
感染後3週間を経過すると、T.p.が侵入した部分に1cm前後のしこりができ、これを初期硬結といいます。その後中心に潰瘍(えぐれ)を作り硬性下疳となります。これらは一般に痛みなどの自覚症状はなく1個のことが多いですが、多発することも珍しくはありません。よくできる部位は男性では冠状溝、包皮、亀頭、女性では大小陰唇、子宮頸部です。くちびるや手指などにできることもあり、陰部外初期硬結あるいは陰部外下疳と呼ばれますが、発生頻度は低く2〜3%以下です。初期硬結や硬性下疳ができたあと両側鼠径部(足の付け根)などのリンパ節に、無痛性横痃(むつうせいおうげん)と呼ばれる痛みを伴わない硬いしこりがみられます。1期疹は放置していても2〜3週間で消え、その後約3か月間は無症状となります。無症状とならず、次に述べる2期疹が出現するまで持続する場合はエイズなどが疑われます。
診断はT.p.の検出または血液検査(梅毒血清反応)によりなされます。T.p.の検出は病変部の検体を用い病原体を確認することによります。梅毒血清反応には、カルジオリピンを抗原とする非特異的なRPRカードテスト(rapid
plasma regain card test)、自動化法による測定、凝集法と、T.p.を抗原とする特異的なTPHA法(treponema pallidum
hemagglutination test)などがあります。また治療効果の判定にはカルジオリピン抗原検査法が用いられます。
2.第2期梅毒:
第2期でみられる発疹は多彩です。丘疹性梅毒疹、梅毒性乾癬が出現頻度としては高く、梅毒性バラ疹、扁平コンジローマ、梅毒性アンギーナ、梅毒性脱毛が続きます。丘疹性梅毒疹は感染後12週で出現する赤褐色の小豆〜エンドウ大のしこりです。梅毒性乾癬は手のひらや足の裏に生じる赤褐色から赤銅色の丘疹性梅毒疹です。梅毒性バラ疹は体幹を中心に顔や手足にみられる約1〜1.5cm大の目立たない淡い紅色の斑です。第2期の最も早期にみられる症状で、数週間で消えるため見過ごすことが多いものです。扁平コンジローマは肛門周囲や陰部にみられることが多く、淡い紅色から灰白色の平たく盛り上がったしこりです。扁平コンジローマにはT.p.が多数存在するため感染源となることが多いです。梅毒性アンギーナは、のど(扁桃や軟口蓋を中心)に赤みや糜爛(ただれ)、潰瘍(えぐれ)を有する腫れです。梅毒性脱毛は虫喰い状の脱毛で、まばらな頭髪となります。
診断はT.p.の検出または血液検査(梅毒血清反応)によりなされます。
3.第3期梅毒:
感染後3年以上経つと、結節性梅毒疹やゴム腫(皮下組織のしこり)を生じてくることがあります。しかし現在ではほとんどみられません。
4.第4期梅毒:
梅毒による大動脈炎、大動脈瘤、脊髄ろう、進行麻痺などの症状が現れることがあります。第3期梅毒同様、現在ではほとんどみられません。
U.無症候梅毒
症状はありませんが、梅毒血清反応(血液検査)が陽性のものをいいます。T.p.を抗原とする検査で生物学的偽陽性反応(BFP)を除外する必要があります。初めから全く症状がない場合や、第1期から2期への移行期、第2期の皮膚病変が消えたあと、陳旧性梅毒(すでに治っているが反応だけ出たもの)などが当てはまります。感染1年以内の早期潜伏期とそれ以降の晩期潜伏期に分けるとすれば、晩期潜伏期の中には治療を必要としないケースも多いので配慮が必要です。
V.神経梅毒
中枢神経系にT.p.が感染して起こるものの総称です。感染すると数時間でT.p.は血流に乗って髄液に運ばれます。そこで脳と脊髄の髄膜腔および血管に沿って広がり、実質を侵していきます。第1期および2期梅毒で生じる早期神経梅毒、それ以降で起こる晩期神経梅毒に分けられ、さらに症状の有無により無症候性神経梅毒と症候性神経梅毒に分けられます。無症候性神経梅毒は早期梅毒患者の約40%にみられます。症候性神経梅毒は感染1年以内の早い時期にみられる髄膜型、10年後に出てくる髄膜血管型、20年以降にみられる実質型(進行麻痺、脊髄ろう)に分類されます。髄膜型は頭痛、吐き気、嘔吐、けいれん、意識障害、眼症状(ぶどう膜炎、虹彩炎)や難聴などが、髄膜血管型は頭痛、めまい、不眠、精神異常が、実質型は人格変化、知能低下、けいれんなどが、それぞれ特徴的な症状です。
W.先天梅毒:
梅毒に感染した母親から出生した子で、生まれた時に肝脾腫(肝ぞうや脾ぞうの腫れ)、紫斑(皮膚の紫色の斑点)、黄だん、脈絡網膜炎(眼の症状)、低体重などを示す症例、早期先天梅毒の症状や晩期先天梅毒の症状を示す症例があります。しかし現在ではほとんどみることはありません。
診断は、母体のカルジオリピンを抗原とする検査の値(抗体価)に比べて子の値が4倍以上高い場合など、でなされます。
X.HIV感染に伴った梅毒
梅毒による潰瘍(えぐれ)がある場合、HIVの感染率が高いと言われています。HIVに伴った梅毒は症状や検査結果が典型的ではないことが多く、神経梅毒が同時に起こるケースも多いと言われています。このような場合はHIVの検査も同時に行うことが推奨されています。
治療
ペニシリンが第一選択となります。ペニシリンにアレルギーがある場合は塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリンを、ただし妊婦の場合にはアセチルスピラマイシンを内服します。第1期は2〜4週間、第2期は4〜8週間、第3期以降では8〜12週間を必要とします。無症候梅毒では、カルジオリピンを抗原とする検査で抗体価が16倍以上を示す場合は治療することが望ましく、治療期間は感染時期を推測して決めます。感染後1年以上経過している場合や感染時期の推測が難しい場合には8〜12週間とします。神経梅毒では点滴による静脈注射を10日〜14日間行います。また先天梅毒も点滴による静脈注射が行われます。
治療開始後数時間でT.p.が破壊されるため、39度ほどの発熱、全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛などのインフルエンザ様症状や発疹の悪化がみられることがあります。これはJarisch-Herxheimer現象と言い、薬の副作用ではありません。
それそれの段階に応じた十分な治療を行ったあとは、症状の持続や再発が無いこと、カルジオリピンを抗原とする検査を定期的に行い、定量値が8倍以下(自動化法では16R.U.未満)になることを確認します。治療後6か月が経っても16倍(16R.U.)以上の時は治療が不十分か再感染と考えられ、再治療が必要です。治療後6か月後および12か月後に梅毒血清反応(血液検査)を行い、治っているかを検討します。
エイズ(Acquired Immunodeficiency Syndrome:AIDS)はHIV(human immunodeficiency
virus)感染により起こります。HIV感染症は血液や体液等により感染する感染症で、性行為感染症の重要な病気の一つです。エイズはHIVがCD4陽性リンパ球に感染し、それを破壊していくことにより免疫能が低下するために、普通は問題とならない細菌に弱くなることが病気の本態です。世界のHIV感染者数は2016年末で3,670万人と推定され、日本でも26,000人に達しています。そしてHIV感染者全体の約3割がエイズ患者です。現在、日本では毎年1,500人ほどの新たな感染者が確認されています。
HIV感染症は、初感染期、無症候期、エイズ期に分けられます。HIV感染後2〜6週間に初感染症状として50〜90%の感染者に何らかの症状が出ると言われています。感染後2〜3週後にHIV血症はピークとなり、発熱、咽頭痛、筋肉痛等のインフルエンザ様症状が出ますが、数日から10週程度で多くは自然に軽快します。その後ウィルス量は6〜8ヶ月後に一定レベルまで減少し、数年〜10年程の無症候期となります。エイズ発症期はCD4陽性リンパ球が急激に減少し、カリニ肺炎等の感染リスクが出てきます。
診断
HIV感染症はHIV-1とHIV-2に分けられますが、日本ではほぼ全例がHIV-1です。HIV感染症の診断は通常2段階で行われます。スクリーニング検査は、抗HIV抗体とHIV抗原の両者を検出することで感度を高めています。しかし未だに誤って陽性反応が出るケースが0.3%程、さらに即日検査で使われる簡易迅速抗体検査キットでは1%程存在することに注意が必要です。現在スクリーニング検査の実施は性感染症または性感染症が疑われる場合へと、その適応は拡大しています。HIV感染症の病態把握としては、CD4陽性Tリンパ球数と血漿HIV RNA量が大変重要です。
治療
近年まで、いつ抗HIV療法を始めるかが大きな問題でした。しかし現在では徐々に、HIV感染症が診断されたあとは比較的速やかに治療を開始するという考えになってきています。身体障害者手帳の取得等の手続きがありますが、診断後2〜6ヶ月以内に治療を開始されることが多いです。
治療の実際は3剤以上の抗HIV薬の併用が標準です。核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、CCR5阻害剤等を組み合わせて治療されます。
また、感染予防として1%テノフォビルゲルの膣内使用が、日本でも2018年2月から一部で試験的に行われています。
前立腺がんは高齢男性に多い病気です。今後も高齢化や食生活の欧米化などから、増加すると予測されています。また、検診で発見された前立腺がんは早期であることが多いですが、尿の症状があって泌尿器科を受診され、前立腺がんがみつかったケースでは進行していることがあります。前立腺がんは検診による早期発見が可能であり、それにより適切な治療ができます。
前立腺がんにかかる人は今後増えることが予想されています。日本での2011年の年齢調整罹患率は胃がん、大腸がんに次いで男性がんの第3位でした。また、2014年の年齢調整死亡率は肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、結腸がん、直腸がん、食道がんに次いで第9位であり、2000年をピークに緩やかな減少傾向にあります。
診断
前立腺がんの診断は、前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)検査を中心としたスクリーニング、生検による確定診断、各種画像診断による病期診断という3つの段階を経て完結します。これらは治療法の決定およびその後の経過を予測するという意味でも大変重要な情報をもたらしてくれます。
まずPSA検査を行い、PSAカットオフ値(0.0〜4.0ng/mL)あるいは年齢階層別PSAカットオフ値(50〜64歳:0.0〜3.0ng/mL, 65-69歳:0.0〜3.5ng/mL, 70歳以上:0.0〜4.0ng/mL)を参考に、カットオフ値を超える場合に経直腸的超音波ガイド下前立腺生検が考慮されます。
前立腺生検には経直腸(直腸の壁からのルート)生検と経会陰(肛門と陰のうの間からのルート)生検があります。生検本数は初回生検では、10〜12カ所の多数カ所生検が推奨されています。いずれのルートでもがん検出率は同じですが、合併症の一つである感染症に関するリスクは経直腸生検の方が高いです。
生検で前立腺がんが確定すれば病期診断を行うことになります。前立腺部でのがんの拡がり(T-病期診断)についてはMRIが最も信頼性が高いとされます。リンパ節転移の有無(N-病期診断)に関しては、最良の評価方法はリンパ節郭清術により摘出したリンパ節を顕微鏡で確認する(病理診断)ことであり、CTやMRIは決して十分でないと考えられています。遠隔転移(M-病期分類)に関しては、骨転移診断には骨シンチグラフィーが、骨以外の転移部位診断にはCTやMRIが適宜選択されています。
前立腺がんの病期診断は治療方針の決定に大きく影響するため、各種画像診断によりできるだけ正確になされる必要があります。
治療
T.ホルモン療法
1.外科的去勢術:一般に精巣(睾丸)を摘出することを示します。LH-RHアゴニストの開発により、今では外科的去勢は殆どなされなくなりましたが、患者様が通院困難であったり経済的な問題で内科的去勢を受けることができないなど、社会的要因を理由になされることがあります。
2.内科的去勢:LH-RHアゴニストが代表的です。これに加え複合アンドロゲン遮断(combined androgen blockade;CAB)療法という名称で、抗アンドロゲン剤との併用も行われています。近年新規ホルモン薬として2012年にLH-RHアンタゴニスト(デガレリクス)が、2014年にはエンザルタミドとアビラテロンが実臨床に導入されました。
3.間欠的ホルモン療法:ホルモン療法を間欠的に繰り返すことにより、ホルモンに対する依存性を長期間維持する試みが提唱されました。これらにより性機能障害などの有害事象を軽くしたり、生活の質を改善したり、治療費を抑えることが期待されています。
U.前立腺全摘除術
前立腺全摘除術は10年以上生きることが予想される方で、かつ悪性度が高くなく(低〜中間リスク)、前立腺内にとどまっているがんに奨められます。方法としては開腹による恥骨後式前立腺全摘除術、腹腔鏡下前立腺全摘除術、ロボット支援前立腺全摘除術などが保険適用のもとに行われています。手術合併症は出血、尿失禁、性機能障害が主なものです。手術療法ではがんの根治性と合併症軽減が求められます。がんの根治性においては、これら3つの術式において切除部にがんが残っている率や、手術後にPSAが再発レベルまで上がる率に大きな差はありませんでした。出血量は、ロボット支援前立腺全摘除術や腹腔鏡下前立腺全摘除術の方が開腹による恥骨後式前立腺全摘除術よりも少ないことが認められています。尿失禁と性機能障害の回復については一定の見解を得るのが難しいですが、開腹による恥骨後式前立腺全摘除術や腹腔鏡下前立腺全摘除術と比較し、ロボット支援前立腺全摘除術で早期の回復が認められたとの報告があります。
V.放射線療法
1.外部照射療法:放射線療法の殆どは体の外から放射線を照射する外部照射療法です。3次元原体照射、強度変調放射線治療、粒子線治療(重粒子線等)などがあります。外部照射療法では前立腺だけでなく周辺臓器(膀胱、尿道、直腸など)にも放射線があたるため、副作用として直腸潰瘍や出血、膀胱出血、勃起障害などが起こることがあります。これらの副作用を軽減するために、よりがんに焦点をあわせた強度変調放射線治療や重粒子線治療が求められます。重粒子線治療は2018年4月から公的保険の適応をうけました。
2.組織内照射療法:組織内照射療法には前立腺に放射線の小線源(ヨウ素125)を永久的に埋め込み、そこから放射線を前立腺に照射し、周辺のがん細胞を死滅させる治療法(低線量率永久挿入組織内照射法)と一時的に前立腺内に針を刺し、高エネルギーの放射線(イリジウム192)を前立腺内に照射する治療法(高線量率組織内照射法)があります。外部照射に比べ、周囲臓器への照射量を抑えることができるので合併症が少ないことが利点です。
W.監視療法
前立腺生検で見つかったがんがおとなしく、治療を開始しなくても余命に影響がないと判断される場合に経過観察を行いながら過剰な治療を防ぐ方法です。監視療法が適している状態はPSAが10ng/mL以下、病期がT2以下(前立腺内にとどまっているがん)、グリーソンスコア(悪性度)が6以下などです。監視療法中は3〜6か月ごとに直腸指診やPSAを測定し、1〜3年ごとに前立腺生検を行います。生検の結果でグリーソンスコアの上昇やがんの占める割合が増えたりした場合などに治療開始を考慮します。
膀胱がんは男性に多く、日本では女性の約4倍に発生すると言われています。また、タバコを吸う人は吸わない人より、膀胱がんになるリスクが2〜4倍高いとされています。
症状として重要なものは血尿で、過去の報告では目で見てわかる血尿の13〜28%に膀胱がんが発見されています。その他の症状としては頻尿、排尿時痛、残尿感などがありますが、これらは膀胱炎などのありふれた泌尿器の病気と共通する症状であり、膀胱がんの見落としに注意が必要です。
診断には組織学的診断と画像診断があります。治療法はがんの深さや悪性度、広がりによって違ってきます。
診断
カメラ(膀胱鏡)やエコー検査で膀胱内の腫瘍を確認します。また尿検査での悪性細胞の有無も参考にします。腫瘍の存在が明らかとなれば、特殊な手術用カメラで膀胱内の腫瘍を切り取ります(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)その時に切り取った腫瘍を顕微鏡で確認し、膀胱がんかどうか?膀胱がんであればがんの深さはどうか(筋層非浸潤性膀胱がん、または筋層浸潤性膀胱がん)?などの最終的な診断がなされます。
膀胱がんであることが確定したら治療方針を決定するためにがんの広がりを見る検査が必要でエコー、CT、静脈性尿路造影(造影剤というレントゲンに写るお薬を注射して撮影)、MRIなどが行われます。これらの検査は一般に手術前に行うことが多いです。
治療
T筋層非浸潤性膀胱がんの治療:初期治療として経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)による膀胱温存を目指した治療が選択されます。しかし完全に切除することが難しい場合や再発の予防を目的として種々の抗がん剤やBCG(結核のワクチン)を膀胱内に注入する方法(膀胱内注入療法)が行われることがあります。
U上皮内がんの治療:BCG膀胱内注入療法行うことが一般的です。週に1回の注入を6〜8回ほど行い、その後1年以上の維持療法が推奨されています。
V筋層浸潤性膀胱がん
1.リンパ節転移あるいは遠隔転移を認めない場合:膀胱全摘除術+リンパ節郭清術(リンパ節切除)+尿路変向術(尿の排出ルートを確保する手術)が標準的な治療です。男性では膀胱、前立腺、精嚢をひと塊として摘出します。女性では膀胱、子宮、膣前壁をひと塊として摘出することが奨められていましたが、子宮や膣前壁を摘出しなくてもその後の生命に影響しないとする報告もあります。
2.骨盤壁あるいは腹壁への浸潤、あるいはリンパ節転移か遠隔臓器転移がある場合:化学療法、放射線療法、救済的外科的治療、尿路変向術などを駆使し、その方の病状に応じた治療が選択されます。
テストステロン(男性ホルモン)は主に精巣(睾丸)で作られます。加齢に伴いテストステロンが減ると様々な症状が出てきます。それがLOH症候群です。テストステロンの働きには性機能、筋肉増加や骨の形成、造血作用、脂質代謝などがあります。
テストステロン減少が引き起こすとされる症状は、@身体症状(筋肉・骨成分の減少、肥満)、A精神・心理症状(抑うつ、不安、疲労感、認知力低下)、B性機能症状(性欲と勃起能の低下)など、多岐にわたっています。また最近ではテストステロンが低い人は高い人より短命で、がんや心臓病、糖尿病、メタボリック症候群、などになりやすい事がわかってきました。このように、テストステロンの低下は心身に様々な影響を与えている可能性が高いのです。
男性更年期障害になりやすい方の特徴
完璧主義・真面目・柔軟性がない・責任感が強い・弱音をはかない・社交的ではない・スキンシップをうまくとれない・夫婦や親子関係がうまくいっていない・運動嫌い・太り気味・筋肉が少なく脂肪が多い・お酒をたくさん飲む・デスクワークが多い職業や管理職の方、などが挙げられます。
診断
問診、質問票、検査所見などにより総合的に診断されます。質問票はLOH症候群の重症度を知る指標(Aging Males' Symptom(AMS)
rating scale)が重要です。その他、LOH症候群の方の大部分が訴える勃起障害に対してIIEF-5(International Index
of Erectile Function 5)、排尿の状態を知るためにIPSS(International Prostate Symptom
Score)などを必要に応じ使用します。検査としては身長・体重・BMI・血圧測定・血液検査(ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、AST、ALT、γ-GT、カルシウム、リン、血糖、PSAなど)・尿検査(タンパク、糖、潜血)・胸部レントゲン・心電図などを必要に応じ行います。また、陰部の診察・陰のうエコー検査・前立腺直腸内触診などを行います。
なお、採血項目で特に重要なものはホルモン検査で、遊離型テストステロン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、プロラクチンなどを確認します。
※男性更年期障害質問表(AMSスコア)
治療
遊離型テストステロン値などを参考にして治療方針が決まります。遊離型テストステロン値が8.5pg/mL未満である場合にはLOH症候群の可能性が高いと考え、男性ホルモン補充療法(ART)の施行を考慮します。8.5pg/mL以上11.8pg/mL未満の場合は低下傾向群としてARTを治療選択肢の1つとします。また11.8pg/mL以上の場合はLOH症候群の可能性は低いと考え、症状に応じた治療方法を考慮します。
男性更年期障害予防・改善のポイント
1.ウエスト周りに注意しましょう。肥満者は減量しましょう。
2.生活を活発にしましょう。2日に1回、できれば毎日1万歩程度のウォーキング(有酸素運動)が良いと思います。
3.体幹の筋肉を鍛えましょう(スクワットや腹筋、背筋など)。
4.人参の入った漢方薬(補中益気湯、牛車腎気丸など)を服用しましょう。
5.亜鉛(牡蠣・肉・いわし・ココアなど)、ビタミンB1(肉・ハム・うなぎ・海苔・大豆など)を積極的に摂りましょう。サプリメントでも良いと思います。
6.睡眠を十分に取りましょう。
7.禁煙しましょう。
8.飲酒はビール1本程度にとどめましょう(休肝日をつくりましょう)。
9.趣味を持ち、心豊かな時間を過ごせるようにしましょう。
10.パートナーとの会話やスキンシップを大切にしましょう。
勃起障害とは、満足な性交渉をするために十分な勃起を発現あるいは維持できない状態です。ある報告では、日本人における勃起障害の罹患率は40歳代で15%、50歳代で23%、60歳代で39%、70歳代で71%、とされています。
勃起障害の原因としては、神経や血管の異常、心因性のもの、などが考えられています。また、勃起障害のリスクファクターとして考えられているものには、加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、うつ病、前立腺肥大症、薬剤、などがあります。
診断
経過を伺い、簡単な質問表にお答えいただきます。
※ED質問表(IIEF5)
治療
第一選択はPDE5阻害薬(シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル)です。これらの薬剤により約70〜80%の方で勃起が改善すると言われています。また薬剤の効果が見られない場合でも、それぞれの薬剤にあった適切な服薬方法をアドバイスすることで約半数の方に勃起の改善を認めます。薬物療法の効果が見られない場合は、次のステップとして陰圧式勃起補助具の使用や海綿体注射、プロステーシス挿入手術などが考えられます。
男性型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)は思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症で、発症には遺伝と男性ホルモンが係わっています。前頭部や頭頂部などの脱毛部の毛穴(毛乳頭細胞)には男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)が高濃度に見られ、これが髪の毛の成長期を短くし、太く長く成長する前に抜けてしまう原因と考えられています。
診断
問診と頭髪の状態より診断されます。
※AGA問診票
治療
5α還元酵素阻害薬は飲み薬の第一選択薬として用いられ、これは男性型脱毛症の原因であるジヒドロテストステロン産生を妨げる事により効果を発揮します。副作用としては勃起障害、射精障害、精液量減少などがありますが1%未満と稀です。また肝機能障害や乳房痛、抑うつ症状などがごく稀に見られる事がありますが、全体として大きな副作用はありません。
前立腺がんの腫瘍マーカーである血清PSAが約50%低下しますので、検査を受けられる際は内服している事を担当医へ報告する必要があります。
その他の治療としては、頭皮につけるタイプの5%ミノキシジル外用液が外用薬の第一選択薬として用いられます。これらの治療以外にもシャンプーの仕方や、バランスのとれた食事、十分な睡眠、禁煙、ストレスのコントロールなど、髪のためにトータルで気をつける事が重要でしょう。
5α還元酵素阻害薬は効果が出るまでに通常6ヶ月以上かかります。根気よく治療を続ける事が大切です。内服により異常があれば内服を中止し、担当医へご相談ください。
費用(税込:2021年6月現在)
・初診料:1,650円
・再診料:なし
※診察(相談)のみの場合は初診3,200円、再診1,500円となります
※最後の受診から1年以上経過した場合は初診扱いとなります
お薬の料金
○フィナステリド 1mg(28日分)ジェネリック:5,500円
○デュタステリドカプセル 0.5mg(30日分)ジェネリック:7,700円
お知らせ
・診察はプライバシーに配慮し、完全個室の診察室にて院長1人で対応いたします。お薬は診察室で患者様へ直接お渡ししますので、どうぞご安心ください。
・AGAは自由診療となります。保険外診療ですので健康保険証は必要ありません。
・過去の検診結果がなどがありましたらご持参ください。
おねしょは乳幼児期の夜尿で生理的なものと考えられています。一方5〜6歳(小学校入学前後)以降は病的と捉え夜尿症と言います。5歳で約20%、10歳で約5%が夜尿症でお困りです。
以前は夜尿症に対して自然経過を見守る考えが強かったのですが、最近は夜尿症に対するいくつかの治療法が確立されてきており、積極的に治療が行われるようになってきました。
原因は夜間の尿が作られる(尿産生)メカニズムの異常、夜間の尿をためる(蓄尿)メカニズムの異常、眠ったり起きたり(睡眠覚醒)の異常など、様々な要因が複雑に関与した症候群とされています。ほとんどのケースでは基礎となる病気がなく夜尿のみを訴えますが、一部のケースに基礎となる重要な病気(先天性腎奇形・尿崩症・糖尿病・神経性多飲症・尿道狭窄・過活動膀胱・二分脊椎など)があることがあります。
診断
十分な問診と診察、尿検査などから、基礎となる病気が疑われる場合は、血液検査や尿流測定、エコー検査やレントゲン検査などを行います。これらの検査で明らかな異常がない場合は、基礎となる病気がない夜尿症と診断されます。そして、夜間の尿量と昼間の膀胱容量(がまん尿量)などから、多尿型・膀胱型・混合型のいずれに該当するかを判断します。
治療
@生活指導
就寝2〜3時間前からの飲水制限、就寝時の排尿、排尿がまん訓練などがあります。実際に就寝前の飲水制限や排尿がまん訓練をしっかり行うと、それだけで夜尿の約2割は治るとの報告もあります。
A行動療法
行動療法には夜尿アラーム療法があります。夜尿の水分を感知して警報が鳴る装置を用います。これにより睡眠中の尿保持力が増大し、朝までもつようになると推測されています。有効症例では1〜2ヶ月で膀胱容量が約1.5倍になります。有効率は62〜78%、治療中止後の再発率は15%と報告されています。ただし本人がアラームで起きない時は家族が本人を起こす必要があり、これらの負担により治療中断となる症例が10〜30%と多いのが問題です。
B薬物療法
夜尿症治療の第一選択薬は抗利尿ホルモン剤(尿量を減らす作用)です。以前はスプレータイプの薬で鼻腔(鼻の穴)に噴霧していました。しかし最近ではより安定した薬の濃度を保つ事ができる錠剤が主流となっています。夜尿型では70〜80%と有効率が高いです。ただし水中毒の恐れがあり、適切な飲水制限のもとに使用する必要があります。その他、抗コリン剤(膀胱のふくらみを助ける作用)や抗うつ薬は症例を選んで使用する場合があります。
ワンポイントアドバイス
※規則正しい生活をしましょう
夕食は控えめにして、できるだけ寝る3時間前に済ませるようにしましょう。
※夕食からの水分は控えめにしましょう
朝食と昼食で十分に水分をとり、昼食後からは水分を控えめにし、夕食から寝るまではコップ1杯ほどにしましょう。特にお茶や牛乳は尿量を増やしますので注意してください。
※冷えに注意しましょう
冷えは尿量を増やし膀胱を過敏にします。温かくして寝るようにしましょう。
※寝る前に尿を出しましょう
膀胱を空っぽにして寝るように心がけましょう。
夜間頻尿は夜間おしっこのために1回以上起きる症状です。40歳台の約4割、50歳台の約6割、60歳台以降では約8~9割の方が夜間頻尿とする報告もあります。夜間頻尿は生活の質を下げたり、特にご年配の方はトイレへ行くときに転倒し、骨折の危険性が増すことが指摘されています。
夜間頻尿の原因は様々で@おしっこの量が多い(多尿、夜間多尿)、A膀胱が尿を溜める働きが悪い(前立腺肥大症、過活動膀胱)、B眠りが悪いこと(不眠)などが上げられます。
診断
診断は問診(病歴、飲んでいる薬の内容、おしっこの状態など)、排尿日誌の確認(おしっこの回数や量など)、尿検査や血液検査(尿のバイ菌や血尿、尿糖)、エコー検査(前立腺がんや肥大、膀胱や腎臓)、排尿機能検査(おしっこの出方や量、膀胱の働き)などで行います。
治療
治療には生活指導、行動療法、薬などがありますが、特に夜間多尿は生活指導や行動療法が重要です。
@適切な1日の水分量はおおよそ体重×25ccです。水分の8割は3時間で尿になるので、眠る3時間前はなるべく水分を摂らないようにしましょう。
Aアルコールはおしっこの量を増やし、眠ったあとにパッと目が覚めてその後は眠りにくくなるので、量を減らし眠る3~4時間前に切り上げるようにしましょう。
Bカフェイン類(コーヒー、紅茶、緑茶など)は眠りを悪くしおしっこの量も増やします。効果は4~5時間続くので夜はほうじ茶や番茶、玄米茶などにしましょう。
C塩辛いものは尿量を増やします。喉も渇くのでつい水分量が増えます。減塩に努めましょう。
D眠る4~5時間前の適度な運動(散歩、ダンベル、スクワットなど)は汗をかいて尿量も減り、夜もぐっすり眠れるようになります。また足などに貯まった水分が運動による筋肉ポンプ作用で血管内に戻り、起きている間に尿となって出ます。仰向けで足の下に厚めのクッションを敷いて30分程横になり、その時に足首の屈伸運動などをするのも効果的です。
ワンポイントアドバイス
夜間頻尿は前立腺肥大や過活動膀胱以外に高血圧や糖尿病、心臓病、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、薬の副作用、飲水過剰など、複数の原因が複雑に絡み合って起こります。治療が難しいことが多いですが、今の回数が少しでも少なくなって生活がしやすくなるように根気よく治療しましょう。
21世紀に出現した新たな国民病として慢性腎臓病が注目されています。日本では慢性腎臓病は約1,330万人いると言われ、成人の8人に1人に相当します。よほど進んでいない限り自覚症状がないために、健診などでたまたま発見されることがほとんどです。慢性腎臓病は腎臓の働きが低下するのみでなく心臓病が起こるリスクもあり、早期発見・早期治療が重要です。
診断
@尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿。
A腎臓の働きを見る糸球体ろ過率(GFR)が60mL/分/1.73m2未満。
上記@Aのいずれか、または両方が3ヶ月以上続く場合に慢性腎臓病と診断されます
病気の進行により5段階に分類されます
腎臓の機能 | 糸球体ろ過率(mL/分/1.73m2) | |
G1 | 正常または高値 | 90以上 |
G2 | 正常または軽度低下 | 60〜89 |
G3a | 軽度〜中等度低下 | 45〜59 |
G3b | 中等度〜高度低下 | 30〜44 |
G4 | 高度低下 | 15〜29 |
G5 | 末期腎不全 | 15未満 |
治療
治療の目的は腎機能の悪化を抑え、血液透析へ至らないようにすることです。主に食事療法と薬物療法が行われます。
T. 食事療法
1.水分管理:過剰摂取や極端な制限はしない様にしましょう。
2.食塩の摂取目標:1日3g以上6g未満となるようにしましょう。
3.ダイエット:肥満傾向の人はダイエットに努めましょう(BMIが25未満)
※BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
4.たんぱく質の摂取制限(G3b〜G5):0.6〜0.8g/標準体重(kg)/日が推奨されます。
※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
5.摂取カロリー:適切なエネルギー量は30〜35kcal/標準体重(kg)/日です。
※病態、性別、年齢、運動量などによって異なります。
6.飲酒:エタノール量として、男性は20〜30mL/日(日本酒1合)以下、女性は10〜20mL/日以下が良いでしょう。
U. 薬物療法
腎機能の悪化を防ぐ目的で、高血圧、糖尿病、脂質異常症を治療する薬が使われます。
1.アミノインデックスとは?
血液中のアミノ酸濃度バランスを測定し、現在の健康状態や病気の可能性を評価する検査です。現在がんである可能性や、将来脳卒中・心筋梗塞や糖尿病を発症するリスクなどを評価することができます。
2.どのように評価するの?
アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)は男性5種(胃、肺、大腸、膵臓、前立腺)、女性6種(胃、肺、大腸、膵臓、乳、子宮・卵巣)の現在のがんリスクを、アミノインデックス生活習慣病リスクスクリーニング(AILS)は10年以内の脳心疾患リスクおよび4年以内の糖尿病リスクおよび現在のアミノ酸レベルを、一度の採血で同時に検査できます。結果をランクA、ランクB、ランクCに分類します。
3.検査の対象者は?
AICS胃、肺、大腸、膵臓、乳は25~90歳、AICS前立腺は40~90歳、AICS子宮・卵巣は20~80歳、AILS(脳心疾患リスク)は30〜74歳、AILS(糖尿病リスク)とAILS(アミノ酸レベル)は20~80歳です。なお妊婦、授乳中、がん、先天性代謝異常、透析中の方は、数値に影響があるので検査は受けられません。
4.検査結果に影響を与える可能性がある病気は?
AICS(肺)は慢性閉塞性肺疾患・間質性肺炎・非結核性抗酸菌症・肺結核・肺気腫・無気肺、AICS(前立腺)は前立腺肥大・糖尿病、AICS(子宮・卵巣)は子宮筋腫・子宮内膜症・良性卵巣腫瘍、複数のAICSで脳梗塞があります。AILSは食後高血糖、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝、肝機能異常、高尿酸血症で高値を示すことが分かっています。
5.受診前の注意点は?
・検査は午前中に行います。検査ご希望日の2~3日前までにご予約ください。
・検査前8時間以内に、水以外(食事、サプリメント等)は摂らないでください。なお検査前日の夕食も、肉や魚などの高タンパク質の食事は摂りすぎないようにしてください。
・検査当日朝の運動はお控えください。
6.費用は(2020年1月現在)
この検査は保険外診療となります。
男性・女性:各24,000円(税込)