夜尿症(やにょうしょう)
おねしょは乳幼児期の夜尿で生理的なものと考えられています。一方5〜6歳(小学校入学前後)以降は病的と捉え夜尿症と言います。5歳で約20%、10歳で約5%が夜尿症でお困りです。
以前は夜尿症に対して自然経過を見守る考えが強かったのですが、最近は夜尿症に対するいくつかの治療法が確立されてきており、積極的に治療が行われるようになってきました。
原因は夜間の尿が作られる(尿産生)メカニズムの異常、夜間の尿をためる(蓄尿)メカニズムの異常、眠ったり起きたり(睡眠覚醒)の異常など、様々な要因が複雑に関与した症候群とされています。ほとんどのケースでは基礎となる病気がなく夜尿のみを訴えますが、一部のケースに基礎となる重要な病気(先天性腎奇形・尿崩症・糖尿病・神経性多飲症・尿道狭窄・過活動膀胱・二分脊椎など)があることがあります。
診断
十分な問診と診察、尿検査などから、基礎となる病気が疑われる場合は、血液検査や尿流測定、エコー検査やレントゲン検査などを行います。これらの検査で明らかな異常がない場合は、基礎となる病気がない夜尿症と診断されます。そして、夜間の尿量と昼間の膀胱容量(がまん尿量)などから、多尿型・膀胱型・混合型のいずれに該当するかを判断します。
治療
@生活指導
就寝2〜3時間前からの飲水制限、就寝時の排尿、排尿がまん訓練などがあります。実際に就寝前の飲水制限や排尿がまん訓練をしっかり行うと、それだけで夜尿の約2割は治るとの報告もあります。
A行動療法
行動療法には夜尿アラーム療法があります。夜尿の水分を感知して警報が鳴る装置を用います。これにより睡眠中の尿保持力が増大し、朝までもつようになると推測されています。有効症例では1〜2ヶ月で膀胱容量が約1.5倍になります。有効率は62〜78%、治療中止後の再発率は15%と報告されています。ただし本人がアラームで起きない時は家族が本人を起こす必要があり、これらの負担により治療中断となる症例が10〜30%と多いのが問題です。
B薬物療法
夜尿症治療の第一選択薬は抗利尿ホルモン剤(尿量を減らす作用)です。以前はスプレータイプの薬で鼻腔(鼻の穴)に噴霧していました。しかし最近ではより安定した薬の濃度を保つ事ができる錠剤が主流となっています。夜尿型では70〜80%と有効率が高いです。ただし水中毒の恐れがあり、適切な飲水制限のもとに使用する必要があります。その他、抗コリン剤(膀胱のふくらみを助ける作用)や抗うつ薬は症例を選んで使用する場合があります。
ワンポイントアドバイス
※規則正しい生活をしましょう
夕食は控えめにして、できるだけ寝る3時間前に済ませるようにしましょう。
※夕食からの水分は控えめにしましょう
朝食と昼食で十分に水分をとり、昼食後からは水分を控えめにし、夕食から寝るまではコップ1杯ほどにしましょう。特にお茶や牛乳は尿量を増やしますので注意してください。
※冷えに注意しましょう
冷えは尿量を増やし膀胱を過敏にします。温かくして寝るようにしましょう。
※寝る前に尿を出しましょう
膀胱を空っぽにして寝るように心がけましょう。